農業経営基盤強化準備金制度とは?適用条件などを解説
農業経営の安定化と規模拡大を目指す農業者にとって、経営の基盤を整えるための設備投資や農地の取得は大きな課題となります。
こうした投資を支援し、計画的な農業経営を促進するために設けられている税制上の特例措置が、農業経営基盤強化準備金制度です。
今回は、本制度の定義から適用条件、および損金算入の範囲について解説します。
農業経営基盤強化準備金制度とは?
農業経営基盤強化準備金制度とは、認定農業者が経営所得安定対策などの交付金を原資として準備金を積み立てた場合に、その積立額を損金に算入し、税務上の所得を低く抑えることができる制度です。
この制度の特徴は、積立時と資産取得時の2段階で税制優遇が受けられる点にあります。
まず積立時には、受け取った交付金を準備金として積み立てることで、その金額を所得から差し引くことができます。
これにより、交付金に対する課税を将来に繰り延べることが可能となります。
次に、積み立てた準備金を取り崩して農地や農業用機械などの固定資産を取得した際には、その資産の取得価格から準備金相当額を差し引いて計上する、圧縮記帳が認められます。
圧縮記帳を行うことで、取得した年度に多額の減価償却費を前倒しで計上したのと同様の効果が得られ、法人税や所得税の負担を劇的に軽減できる傾向があります。
つまり、農業経営の基盤を強化するための投資を行う農業者に対し、税金の面から強力なキャッシュフローのサポートを行うことが本制度の目的です。
農業経営基盤強化準備金制度の適用条件
この制度はすべての農業者が利用できるわけではなく、法に基づいた特定の要件を満たす必要があります。
適切な手続きを積み重ねる過程を経て、初めて適用の対象となります。
適用対象者
制度の適用を受けることができるのは、農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村から農業経営改善計画の認定を受けた、認定農業者に限られます。
認定農業者には、個人農業者のほか、農地所有適格法人などの法人も含まれます。
また、税務上の要件として、青色申告を行っていることが求められます。
白色申告ではこの制度を利用できないため、事前の税務署への届け出が重要となります。
さらに、認定農業者としての計画に基づき、効率的かつ安定的な農業経営を目指している実態が必要です。
地域農業の担い手として公的に認められていることが、制度活用の前提条件となります。
適用対象となる交付金
準備金として積み立てることができるのは、国から交付される特定の交付金に限定されています。
具体的には、経営所得安定対策交付金などが対象となります。
たとえば、畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)や、米・麦・大豆などの生産数量目標の達成に関連する交付金がこれに該当します。
また、中山間地域等直接支払交付金など、地域農業の維持を目的とした一部の支援金も対象となる場合があります。
これらの交付金を受け取った後、市町村から農業経営基盤強化準備金として積み立てることの確認を受ける一連の作業が必要となります。
交付金のすべてを自由に積み立てられるわけではなく、法で定められた範囲内であることが求められます。
適用対象となる資産
積み立てた準備金を取り崩して取得し、圧縮記帳の対象にできる資産は、農業経営に直接供される固定資産です。
主要な3つの区分を記述します。
1つ目は、農地等の取得です。
農業の規模拡大に直結する農地の購入費用が対象となります。
ただし、農地中間管理機構などを通じて取得するなどの一定の要件が付される場合があります。
2つ目は、農業用機械の取得です。
トラクター、コンバイン、田植機といった農作業に欠かせない動力機械のほか、ドローンや自動操舵システムなどの最新設備も含まれます。
中古品ではなく、原則として新品の取得が対象となる点に注意が必要です。
3つ目は、農業用施設の取得です。
ビニールハウス、育苗施設、農産物の貯蔵庫、加工施設、畜舎などが該当します。
これらの建物や付属設備を建設、あるいは購入する際に準備金を充てることができます。
これらの資産は、認定を受けた経営改善計画の内容に沿ったものであることが必須であり、個人の私的な利用や、農業以外の事業に転用されるものは認められません。
損金算入の限度額
準備金を損金として計上できる金額には、明確な上限が定められています。
算用数字を用いて解説すると、損金算入できる限度額は、原則として、その年度に受け取った適用対象交付金の合計額となります。
ただし、農業所得の金額が交付金の額を下回っている場合には、その農業所得の金額が上限となります。
つまり、税務上の赤字を出してまで積み立てることは認められていないという仕組みです。
たとえば、年間の対象交付金が500万円あり、農業所得が800万円であった場合、500万円全額を準備金として積み立てて損金に算入できます。
一方で、所得が300万円しかなかった場合には、300万円までしか損金算入が認められません。
この積立限度額の計算は、毎年度の決算において正確に行う必要があります。
また、一度積み立てた準備金は、5年以内に資産の取得に充てなければならないという期間制限もあります。
もし5年以内に資産を取得しなかった場合、その準備金は所得として順次戻し入れられ、課税の対象となります。
計画的な投資スケジュールを立てることが、この制度を最大限に活用するための道筋となります。
まとめ
今回は、農業経営基盤強化準備金制度の仕組みや、適用を受けるための条件について記述しました。
この制度は、交付金という公的な支援を、単なる運転資金の補填に終わらせず、将来の農業経営の基盤となる設備や土地の取得へと繋げるための、極めて実効性の高い税制優遇措置です。
積立時の所得圧縮と、取得時の圧縮記帳を組み合わせることで、農業者は重い税負担を回避し、再投資のための現金を確保することが可能になります。
利用を検討されている方は税理士に相談してみてください。
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- 所属
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- 東北税理士会十和田支部
- 青森県行政書士会十和田支部
- 青森県FP協会十和田支部
- 経歴
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- 福岡県鞍手郡小竹町(昭和27年2月)生まれ
- 高校卒業後税務署に勤務 専修大学商学部卒業
- 東京国税局管内 練馬・相模原・渋谷・王子税務署勤務
- 仙台国税局出向 十和田・八戸税務署勤務
- 平成5年8月十和田市で税理士事務所開業
- 税務署では、所得税・源泉所得税・法人税を担当
- 趣味は旅行、写真、ビデオ、ドローン撮影、乗馬 流鏑馬

舘花 満弘Tatehana Mitsuhiro
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- 所属
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- 東北税理士会十和田支部
- 経歴
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- 青森県八戸市(昭和44年6月)生まれ
- 高校卒業後税務署に勤務 青森県立八戸高校卒業
- 仙台国税局管内 八戸・黒石・むつ・青森・仙台国税局
- 東京国税局・仙台南・盛岡・仙台中・十和田の各税務署
- 国税局勤務
- 令和3年7月 髙岡和人税理士事務所に勤務
- 税務署では、法人税を担当
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